生活習慣病、心筋梗塞の治療は
急性期絶対安静が原則である。
生活習慣病、心筋梗塞は、心筋に対する相対的・絶対的酸素供給不足が原因であり、安静にして酸素吸入を行う。また鎮痛および体の酸素消費低下目的で、モルヒネを投与する場合もある。急性期には心筋梗塞の病巣拡大を防ぐことが最大の目的となる。
一般的には対症療法中心に行いつつ病状の安定を図り、合併症の発生を厳重に管理する。通常はアスピリン内服、酸素吸入、輸液、
モルヒネ、硝酸薬などが中心に行われる。欧米ではMorphine, Oxygen, Nitrate, Aspirinの頭文字をとってMONA(モナー)が心筋梗塞のFirst Aidである。
発症6時間以内の心筋梗塞の場合、積極的に閉塞した冠動脈の再灌流療法を行うことで、心筋の壊死範囲を縮小可能である。これに限らず、発症から24時間以内の症例では、再灌流療法を行う意義が高いとされる。
大別して
カテーテル的治療(PTCA, PCI)を行う場合と、血栓溶解療法(PTCR)があり、国により、保険により、医師の判断により治療方針が分かれていることがある。日本では、PCIの可能な施設も多く、急性期であればPCIが行われることが多い。
ただし、動脈を介した検査・処置であることから合併症も多い。特に心電図上STの上昇が見られた場合、如何に早くPCIを行うかが重要であるが、救急搬入後直ちに同療法を行える体勢を取っている病院は、心臓病治療の先進国である米国でも僅かである。
狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急
冠動脈大動脈バイパス移植術 (CABG) が行われる施設もある。PCI と CABG を比較すると PCI では25〜30%再狭窄を来すとされていたため、1枝病変であっても CABG に優位性があるという説もある。しかし、2004年から薬剤溶出性ステント (drug-eluting stent, DES) が保険適応となり、PCI の成績向上が期待されている。
安定期急性期にインターベンションが成功すると、比較的予後は保たれることが多い。安定期には安静、内服加療が中心となり、疾患の特徴上糖尿病、高血圧、高脂血症などが併存することが多いため、これらに対する検査・治療、患者教育などが中心となる。
インターベンション不成功例、発症から時間が経過していた例などは合併症を生じることが多い。
合併症狭窄が生じた冠動脈の部位と発生からの時間で大まかに分別される。
不整脈心筋梗塞による急性期の死亡の多くは発症後の不整脈による。急性期24時間以内に最も多く発生し、心筋梗塞の死因の第1位である。
期外収縮ほとんどに合併する。
心室細動
左冠動脈 (LCA) 梗塞で特に前壁梗塞に生じやすい。発症後数時間以内に生じるものが多い。致死的な合併症である。
房室ブロック
右冠動脈 (RCA) 梗塞の結果として伝導経路が障害されると起こる。洞房結節そのものが障害されると Sick Sinus Syndrome (SSS) をおこしうる。
心不全頻度は低いが、心不全は発症すると死亡率が高い。Swan-Ganzカテーテルで心機能を評価する Forrester分類に応じ、対症的に治療する。
乳頭筋断裂発症数日後に生じることが多く、右冠動脈 (RCA) 梗塞の下壁梗塞に生じることが多い。たいていは発症すると重篤な僧帽弁閉鎖不全を伴い、心不全の原因となる。治療として CABG をおこなう場合は、同時に僧帽弁置換術をおこなうこともある。
心破裂心筋が壊死し、心臓の血圧に耐えられずに外壁が破裂する症状。基本的にこれが起こると即死である場合が多く、助かることは難しい。 因みに右心室と左心室の間に穴が開くことを心室中隔穿孔という。
心室瘤心室瘤は、左冠動脈前下降枝 (LAD) 梗塞の結果として心尖部に生じることが多い。心筋梗塞治療後も遷延する ST上昇の原因であることがある。破裂しやすく、心タンポナーデの原因となる。
心筋梗塞後症候群(Dressler症候群)
発症数週間後に生じる自己免疫性心外膜炎。
予後発症すると致死率は20%と非常に高い。そのほとんどは急性期に生じる不整脈を合併した例である。発症後48時間以内の致死率が特に高いため、それを乗り切れば救命できる確率も高くなる。
※モルヒネ(morphine モルフィン、モヒともいう)はアヘンに含まれるアルカロイドで、チロシンから生合成される麻薬のひとつ。ベンジルイソキノリン型アルカロイドの一種。分子式 C17H19NO3。分子量285.4。モルヒネからは依存性のきわめて強い麻薬、塩酸ジアセチルモルヒネがつくられる。
塩酸塩・硫酸塩は鎮痛・鎮静薬として種々の原因による疼痛(とうつう)の軽減に有効であるが、依存性が強い麻薬の一種でもあるため、各国で法律により使用が厳しく制限されている。
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経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ)とは、アテローム等により狭窄した心臓の冠状動脈を拡張し、血流の増加をはかる治療法で虚血性心疾患に対して行われる。
具体的な方法としては、狭窄した病変部にガイドワイヤーと呼ばれる細い針金を通過させ、そのワイヤーに沿ってバルーンカテーテル(風船)を病変部まで届けて、風船を膨らませて病変を拡げる治療がもっとも古くシンプルな治療で、POBA (plain old balloon atherectomy) と呼ぶ。拡張した部分にステントと呼ばれる金属の内張りを留置することが多い。また病変部の石灰化が強い場合、風船で拡がりきらずロータブレーターと呼ばれるダイヤモンドチップをまぶしたドリル状の先端チップを高速回転させ石灰化を削り取る治療法もある。
このように、カテーテルを用いて治療を行うことを総称して(経皮的)カテーテルインターベンション (PCI) と呼ぶ。
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冠動脈大動脈バイパス移植術(かんどうみゃくだいどうみゃくばいぱすいしょくじゅつ)は、虚血性心疾患に対し行われる手術的治療法である。虚血性心疾患は、心臓の筋肉(心筋)への酸素供給量が低下し、需要量を下回ることによって起こる。心筋への酸素供給量が低下する原因の一つに冠動脈の狭窄、閉塞による血流量の低下が挙げられる。冠動脈大動脈バイパス移植術は狭窄した冠動脈の遠位側に大動脈(または内胸動脈)から血管をつなぎ、狭窄部をバイパスすることで血流量の回復をはかる手術である。
手術は全身麻酔下で行われる。手術の手順としては、開胸、バイパスに使う血管(グラフトと呼ぶ)の採取、グラフトの冠動脈への縫合、グラフトの大動脈への縫合、止血、閉創となる。このうちグラフトに用いられる血管と、グラフトの冠動脈への縫合に関しては何通りかの方法がある。
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不整脈(ふせいみゃく)とは、心拍数やリズムが一定でない状態の事を言う。また心拍や脈拍が整であっても、心電図異常がある場合は臨床的には不整脈である。
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心不全(しんふぜん)は、症状ないしは病態の一種。心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。
心不全は、心臓が、全身が必要とするだけの有効な循環血漿量を保てないことを表す概念であり、そのような病態となるに至った原因は問わない。
心不全という語は、以前、死因が不詳である場合に死亡診断書に記載される死因として頻繁に採用されていた。脳死という特殊な状況を措けば、人間は死と宣告される際には当然心臓が停止しているのであるから、死亡の直前には心不全と言える状態が、確かにあったと言えよう。しかしこのような、「死因不明の代名詞」としての心不全が死亡統計に表れるのはふさわしくなく、1995年より、死亡診断書上に、終末期状態としての心不全や呼吸不全は直接死因として書かない旨の注意書きがなされるようになって、統計に表れる死因としての心不全は大きく減少した。
また、「心不全」と「心停止」は全く別の概念であるが一般的には混同される傾向にあり、死ぬときに心臓が止まるのは当たり前だという理由から、死亡した患者の遺族が「心不全」という診断に納得しないこともあり、その扱いにおいて、しばしば特別の注意が払われる用語でもある。
このようないわくがある「心不全」という語であるが、様々な基礎疾患から、あるいは原因不明に、臨床医が「心不全」と考えるような病態を来たし、それが直接の死因となって死亡した場合には、死因が心不全となるのは差し支えないことである。そして、逆に言えば日常臨床で使われる「心不全」という語は、心拍出の低下に伴って特徴的な症状をもたらす、高度に確立された概念であるとも言える。