クモ膜下出血の合併症再出血再出血は脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の %に起こり、特に発症後24時間以内が最も多い。再出血を起こすと
予後不良である。
Hunt and Kösnikグレードで3以上の症例では、発症の数時間以上前に弱い頭痛を経験している患者が見られており、「それ自体が最初の出血で、受診時の出血は再出血である」可能性も一部で指摘されている。
外傷性のクモ膜下出血では、再出血はほとんど起こらない。
脳血管攣縮血腫の影響で脳の動脈が縮んでしまい、最悪の場合その動脈支配領域の血流が途絶える状態。発症後4日から14日の間に発現する。脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の3〜4割で起こり、さらにその3〜4割は生命予後が不良となる。
・脳動脈瘤はウィリス動脈輪の近傍に形成されることが多い。
・脳への血流は必ずウィリス動脈輪を通る。
・ウィリス動脈輪以後の動脈支配には側副血行路がない。
以上の要因により、血管攣宿による梗塞は通常の脳梗塞よりも重篤な物となるのである。
脳血管攣縮の機序は次の通りである。
・まず、血管周囲の血腫に含まれるヘモグロビンは3〜4日の間に変質してヘモジデリンやヘミンとなる。
・これらが周囲の血管壁が分泌する一酸化窒素(NO)を分解する。
・動脈は常に血管を拡張させる物質と収縮させる物質を分泌しており、その量の調節によって血流を自立的にコントロールしている。しかしNOが分解されてしまうことにより、血管収縮物質のみが残ってしまう。
脳血管攣縮の診断は、経頭蓋的なドプラーエコーによって行う。この時血流が通常よりも速くなっていれば、脳血管攣縮が起き始めていることを表す。梗塞まで至らない軽度の血管攣縮は、脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血のほぼ全例に見られる。また、完全に梗塞が起きてしまった場合には、CT上大きな低吸収域が認められることによって診断が確定する。
脳血管攣縮の危険性は、CT上の血腫の大きさと分布をFischerグレードで表すことである程度予測できる。
心血管系の合併症発症によるストレス反応で急激に血圧が上昇し、心負荷と内分泌系の失調により肺水腫が起こる。また、心臓に異常が無くともT波の陰転が見られることがある。重症例ではクレアチンキナーゼMBやトロポニンTの上昇もみられ、高負荷が心筋にダメージを与えていることを示唆する。
尿崩症脳浮腫により脳圧が亢進すると、視床下部および脳下垂体が機能不全に陥り、尿量を調節する種々のホルモンが減少することによって尿量が増加する。これは後述する3H療法の妨げとなる。形態により真性尿崩症(Diabetes insipidus)、
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(Syndrome of inappropriate anti-diuretic hormone)、塩類喪失症候群(Salt-wasting sydrome)の3種類がある。
正常圧水頭症正常圧水頭症は急性期を過ぎた晩期に見られ、生命予後には余り影響しないが機能予後を低下させる。
治療以上のように、クモ膜下出血の予後決定要因は再出血と脳血管攣縮、そして血腫や脳浮腫によって脳血流が妨げられることにある。この3つに焦点を絞った治療を行う。脳神経外科の専門病院に搬送し、緊急に原因治療を行い、合併症の出現を防ぐ。
感覚遮断最初の24時間は再出血の危険が極めて高いため、鎮静剤と暗室により血圧上昇を防ぐ。
開頭動脈瘤クリッピング術利点
・直視下に動脈瘤が確認できる。
・長年にわたる成績がでており、再破裂のリスクが低い。
・血腫が存在する場合一緒に除去できる。
欠点
・動脈瘤が嚢状でないと困難。
・脳・血管の損傷。
48時間以内に行うのが理想である。ただ、出血直後は動脈瘤からの出血が止血していない可能性があるため、最低でも発症から6時間経過した上で開頭する。
この手術で使用されるクリップはチタン製のものが多い。鉄を使用しないのは、MRIが使用できなくなるのを避けるためである。また、血管攣縮を防ぐために同時に血腫の除去も行われる。
なお、未治療で発症から1週間程度経った場合は、手術を施行することで血管攣縮を発症させる可能性があるため、血管攣縮の可能性が少なくなる時期までは治療しない。
血管内治療造影下において動脈瘤内にプラチナ製のコイルを詰めて閉塞するコイル塞栓術(脳動脈瘤コイリング術)、血管攣縮に対する血管拡張薬動注療法が行われる。
3H療法血管攣縮の予防、並びに脳浮腫の状態でも動脈潅流を維持するため、高血圧(Hypertension)・高循環血液量(Hypervolemic)・血液希釈(Hemodilusion)療法が行われる。 具体的には高張輸液の大量投与、時には高カロリー輸液やアルブミンの投与も行われる。
予後最初の出血で1/3が死亡する。さらに血管攣縮や再出血の影響が加わり、4週間以内では約半数が、10年以内では60〜80%が死亡すると言われている。また、救命できても後遺症が残る例が多く、完全に治癒する確率は低い。
発症後の予後に関連するものとして、世界脳神経外科連合(WHNS)は意識レベルの程度による重症度分類を提唱している。これはGlasgow Coma Scaleおよび局所神経症状(失語症や麻痺など)によって5段階に分類する方法である。この分類において、grade IIIとgrade IVの間には予後に大きな差があるとされ、特にgrade Vは致死率がほぼ100%であるとまで言われている。そのため、grade IV以上の場合は無意味であるとして治療しない病院も多い。
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予後不良(よごふりょう)とは、治療後の経過あるいはその見通しが良くないこと。 病気やけがの性質(重大性)によって意味が異なる。
以下のような場合を表わす。
・後遺症が残る
・治癒(回復)が望めない
・進行(悪化)が抑えられない
・再発する
・重篤な副作用が起きる
・延命が困難である
・死亡する
見通しを立てる場合、種々の要素を経験的あるいは統計学的な知見に照らして判断する。診断名、症状、病期、病理像(肉眼像および組織像)、病変部位、進行の速さ、遺伝子(患者あるいは腫瘍の)、血液検査、尿検査、他疾患の合併、年齢などを考慮する。
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抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(こうりにょうほるもんふてきごうぶんぴつしょうこうぐん)とは、尿量を減少させる作用を持つホルモンであるバソプレッシンが血漿浸透圧に対して不適切に分泌、または作用することによって起こる症候群。
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正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)は、脳圧亢進症状の見られない、水頭症の一種である。
脳脊髄液は、脈絡叢で産生され、各脳室を通り脊髄腔に流れ、吸収される。このバランスが崩れ、急激な脳圧亢進症状を来たすことなく慢性的に軽度の脳圧亢進状態が持続すると、脳の機能が次第に傷害され、痴呆、歩行障害、尿失禁に代表される多彩な神経症状が出現する。頭部CT検査などで、側脳室の拡大がみられるため、水頭症と診断される。その時、実際には微妙に脳圧は亢進しているのだが、検査では脳圧亢進とは診断されないため、正常圧の水頭症と呼ばれる。
日本では特定疾患に認定された指定難病である。